幼少期に家庭内の事情や友人との人間関係などを通じて辛い体験をして、それが今でもトラウマになっているという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
その様な方は、インナーチャイルドと呼ばれる自分の中の子供の人格が深い傷を負い、そのままになってしまっている可能性があります。
この記事では、インナーチャイルドとはどの様なものであるかを解説した上で、その傷を癒やして前向きに生きるためのアドバイスを紹介します。
インナーチャイルドとは日本語に訳すと「内なる子供」となり、大人になっても自分の中に残り続ける子供時代の感情や記憶、想いを指します。
インナーチャイルドは多くの場合で、辛い体験に基づくネガティブなものであり、思考や行動に大きな影響を与えるとされています。
具体例を上げるなら、次のようなものが傷ついたインナーチャイルドを大人になっても抱え続ける原因になると言われています。
・親との関係が悪かったり、虐待を受けたりしたことがある
・子供時代にいじめに遭ったことがある
・人間関係がうまくいかずに辛い思いをたくさんした
・他人に上手く愛を求められずに孤独な子供時代を過ごした
インナーチャイルドは幼少期の自分をベースとした人格です。
子供というのは誰かに甘えたい、愛されたいという欲求を基本的なものとして供えていますが、それが叶えられずに上記の様な経験をすることが、インナーチャイルドが傷ついてしまう原因となるケースが多いようです。
そしてその経験は大人になってからも尾を引き、人間関係や人生の捉え方に悪い影を落とすのです。
ここまでの説明で、インナーチャイルドが傷ついた人に近いものとして、アダルトチルドレンを思い浮かべた方も多いかもしれません。
アダルトチルドレンとは、アルコール依存症を患った親の下で育った人が対人関係や生き方において上手く行かないことが多いのではないかという考えに基づいて生まれた概念で
家庭内のトラウマによって社会に順応した大人になりきれず、生きづらさを抱えた人々を指す言葉として使われています。
たしかに幼少期の経験によってインナーチャイルドが傷ついてしまった人も、家庭が原因とは限らないものの、アダルトチルドレンとの共通項は多く見られます。
実はインナーチャイルドというのは正式な心理学用語はないため、概念自体が多少のあやふやさを持っているのですが、インナーチャイルドを見つめ直し、癒やしてあげることがアダルトチルドレンからの脱却につながるという
アダルトチルドレンの治療法という文脈でインナーチャイルドが紹介される書籍なども珍しくありません。
そのため、インナーチャイルドが傷ついたままの人をアダルトチルドレンと捉えるのも、1つの考え方といえますね。
少々脱線してしまいましたが、幼少期の経験によってインナーチャイルドが傷つくと、具体的に大人になってどの様な影響が出るのかを見ていきましょう。
子供が根源的に抱える「甘えたい」「庇護されたい」「愛されたい」という欲求が様々な辛い体験によって裏切られ、大人になっても傷ついたままのインナーチャイルドを自分の中に抱えている人はどうなるのでしょうか。
具体的に多い弊害としては、次のようなものが挙げられます。
・自分に自信が持てない
・自分を好きになれない
・自己主張が弱くなる
・孤独感が強くなる
・他人を信用できない
・人生に前向きになれない
インナーチャイルドが傷つくことは、多くの場合で自己肯定感の低さや対人コミュニケーションにおける不和、人生に対するネガティブな価値観などにつながりやすいようです。
もちろん、こういった悩みの原因は必ずしもインナーチャイルドが原因とは限らず、例えば大人になってからの仕事の失敗で自信を失ってしまうといったこともあります。
しかし、このケースでは仕事の失敗の原因を見つめ直し、対策を立てて次に成功することで自信を取り戻すことは充分に可能でしょう。
挫折をしない人は存在しませんし、多くの場合には乗り越えられるものですので、挫折に伴う自信喪失等も一時的なもので済む場合が多いといえます。
しかし原因がインナーチャイルドである場合にはそうではありません。
自分の人格の1つでもある傷ついたインナーチャイルドを無視し続けている限り、自己肯定感の引くさや孤独感、他人への不信感等は拭うことができず、自分の中に残り続けてしまうのです。
それでは、傷ついたインナーチャイルドを癒やすには、どうすればよいのでしょうか。
インナーチャイルドが傷ついてしまった理由は人それぞれですので明確な答えはありませんが、有効な方法を2つ紹介します。
ワンダーチャイルドとは、過去の体験や環境などに影響を受けなかった本当のインナーチャイルドのことです。
家庭の事情や学校での人間関係などによって傷を負ってしまう経験がなかったとしたら、本当の自分はどの様な人間であったか。
そのワンダーチャイルドを見つけることが、インナーチャイルドの傷を癒やすことに繋がります。
その第一歩としては、インナーチャイルドと向き合い、深く理解することが必要です。
インナーチャイルドが傷ついてしまったことには何かしらの理由があるはずですが、どの様な経験がトラウマの根源になっているのかを、しっかりと見つめ直してみてください。
そしてその様な事柄について自分がどの様に感じたのかを考えてみてください。
インナーチャイルドがふさぎ込んだり、自分を信じられなくなるのは、ある種のつらい経験に対する防御反応ともいえるため、きっかけとなった過去の経験をどう受け止め、なぜその様に振る舞うようになったのかを見つけてあげることが重要です。
そしてそれが明確になったら、子供の時の自分ではなく、大人の視点からインナーチャイルドを慰め、受け入れてあげてください。
例えば子供の時にいじめに遭ってしまったことがきっかけで、自分がいじめられるような人間だからと自分を肯定できなくなってしまったとしても、そこにいたのが今の自分だったらどうでしょう。
いじめはする方が悪いに決まっているし、学校が全てではないのでいくらでも逃げ道はあるということが分かるはずです。
その視点から、自分が悪かったのではないとインナーチャイルドを慰めてあげれば、少しずつ傷が癒えて、あるべき自分であるワンダーチャイルドが見つかるはずです。
グリーフワークとは医療や看護の現場で用いられることが多い言葉で、親族や友人、ペットなど、身近な存在と死別し、喪失感からふさぎ込んでしまった状態から立ち直るための取り組みやプロセスを意味します。
大切な存在との別れは避けることができないものですが、その喪失感は非常に大きなもので、何もできないくらいに落ち込んでしまう方も少なくありません。
そんな状態から立ち直るためには、愛した人がいなくなってしまったことを受け入れ、まずは精神的に、そして徐々に行動的に、最終的には社会的に立ち直っていかなければなりません。
この様な取り組みをインナーチャイルドに対して行うという方法があります。
というのも、子供時代に辛い体験をしたことがある人は、インナーチャイルドが深い傷を負うとともに、本来あるべきであった幸せな子供時代を失ってしまって、もう二度と取り戻すことができないという喪失感を抱えていることが多いのです。
これは最も身近な人ともいえる、幸せに生きられるはずだった子供のころの自分との死別ともいうことができます。
そのため、大切な人との死別を乗り越えるグリーフワークによって、もう戻らない子供時代を受け入れ、立ち直ることができれば、長く後を引いてしまったトラウマを振り切り、前向きに生きていくことができるようになるのです。
具体的なやり方は、やはりワンダーチャイルドを見つける方法と同じように、子供の頃に感じた辛さや悲しみを一度受け止めることが必要になります。
信頼できる人に打ち明けたり、難しいようなら自分だけのノートに書き出したりすると良いかもしれません。
そして自分がなぜ傷を負ってしまったのか、その時どう感じて、本当はどうしたかったのかを明確に理解することができたら、それを受け入れた上で、もう決して戻らない、取り返しはつかないということを受け入れることが重要です。
愛する人を失ったことを受け入れるのと同様、大きな苦しみを伴い、時間もかかるかもしれません。
しかし少しずつでも、自分の子供時代はもう戻らない、やり直しはきかないということを受け入れ、前向きに生きていくことを心に決めてしまうのです。
そして少しずつ立ち直っていくことが重要です。
インナーチャイルドとはどの様なもので、インナーチャイルドが傷を負ってしまった体験を今でも引きずっている場合に、どの様に立ち直れば良いかを解説しました。
子供時代の辛い体験やトラウマというのは克服するのが非常に難しいものですが、だからといってそれに引っ張られてずっと不幸な人生を送る必要はありません。
ぜひこの記事を、インナーチャイルドを解放してあげる参考にしてみてください。