何かに失敗してしまった時や、困難な状況に立たされてしまった時、「どうして自分はこんなにダメなんだろう」と自分を責めてしまったり、「なぜ自分だけが辛い目に遭うんだろう」と孤独を感じたりしたことはありませんか?
その様な方は、セルフコンパッションが低くなってしまっているかもしれません。
この記事では、自分自身を思いやることで人生を幸福にするセルフコンパッションについて、その概要や効用、高め方を詳しく解説していきます。
コンパッションとは「思いやり」「慈悲」といった意味を持ちます。
つまりセルフコンパッションとは「自分自身に対する思いやりや慈悲」という意味を持つ言葉です。
思いやりや慈悲というと他人に向ける者であるというイメージがあるかもしれませんが、実は自分自身に対する思いやり・慈悲も他者に対するものと同じくらい重要であり、人生の幸福度を高め、充実させるために不可欠なものなのです。
セルフコンパッションは2000年代前半にテキサス大学教育心理学部准教授のクリスティン・ネフ氏が自身の瞑想を通じた経験から概念化されました。
それでは、具体的にセルフコンパッションとはどの様なものなのでしょうか。
セルフコンパッションは次の3つの要素から構成されます。
・セルフカインドネス
・マインドフルネス
・コモンヒューマニティ
これらの構成要素から、セルフコンパッションについて詳しく掘り下げていきましょう。
セルフカインドネスを直訳すると、「自分自身に対する優しさ」となります。
その言葉通り、セルフカインドネスを高めることで自分の長所や美点をポジティブに認め、失敗してしまった場合にもネガティブにならずに自分自身をいたわることができるようになります。
マインドフルネスとは、まさに今その瞬間に起こっていることに対する気付きを高め、ありのまま受け入れることを意味します。
マインドフルネスを実践することにより、物事と対面する際に感情に振り回されることなく、ありのままフラットに受け入れることができるようになります。
コモンヒューマニティは「共通の人間性」とも呼ばれ、物事が上手くいかなかったり、躓いたりしてしまった際に、完璧にできないのは自分だけではなく、他の人もそうであるということを認識することを意味します。
コモンヒューマニティを身につけることにより、苦境の中にいる時でもそれは自分だけではないと考えられるため、孤独感にさいなまれることがなくなります。
さて、セルフコンパッションを構成する3つの要素について解説しましたが、ここからはセルフコンパッションを高めることでどの様な効用が得られるのかを、具体的に紹介していきます。
セルフコンパッションには以下の3つの効用があります。
・幸福感の向上
・ストレスの緩和
・レジリエンスの向上
1つずつ詳しく見ていきましょう。
セルフコンパッションの1つ目の効用は幸福感がアップするということです。
幸福というと定義が曖昧に感じられるかもしれませんが、セルフコンパッションによって向上する幸福感としては、次のようなものがあるとされています。
・人生に対する満足感
・物事に対するポジティブさ
・自身に対する評価
・他者に対する感謝
・人生の意味に対する評価
つまり、セルフコンパッションを高めることで自己評価や人生に対する満足感、ポジティブな感情などが高まり、さらに他人や物事にも感謝できるようになるということです。
セルフコンパッションの2つ目の効用はストレスの緩和です。
セルフコンパッションが高い人は、不安やストレスが少なく、さらに良くないことが起こった場合にも、ストレスを感じづらいという特徴が共通して見られました。
ストレスは人生の充実や心身の健康など、様々なものに対して悪影響を及ぼす原因となるため、セルフ個パッションを高めることで得られるストレスの緩和という効用は非常に有益なものであると言えるでしょう。
レジリエンスという言葉はあまり聞き馴染みのないものかもしれませんが、「弾力」「回復力」といった意味を持ち、転じて苦境や困難に対する粘り強さを表す言葉です。
セルフコンパッションが高い人はレジリエンスも同様に高いことがわかっており、厳しい状況に立たされた場合にもすぐに立ち上がり、やり抜く力が強いとされています。
セルフコンパッションが人生を善いものにするためにどれだけ重要なものであるかお分かりいただけたかと思いますが、ここからはセルフコンパッションを高める方法紹介していきます。
セルフコンパッションを高める方法は様々なものがありますが、すぐに実践できる具体的な方法を4つピックアップしましたので、ぜひ自分に合う方法を選ぶ上での参考にしてみてください。
慈悲の瞑想とは仏教の瞑想の一種で、「生きとし生けるすべてのものが幸せであるように」と願いながら行う瞑想方法です。
慈悲の瞑想の特徴として、まず自分自身に対する慈悲・慈愛を向け、徐々に対象を広げていくことで、最終的に生きとし生けるすべてのものを慈しむという点です。
参考までに、日本テーラワーダ仏教協会、上座仏教修道会などで用いられている慈悲の瞑想の言葉を引用します。
これらを頭の中で唱えながら瞑想を行ってみてください。
私は幸せでありますように
私の悩み苦しみがなくなりますように
私の願いごとが叶えられますように
私に悟りの光が現れますように
私は幸せでありますように(3回)
私の親しい生命が幸せでありますように
私の親しい生命の悩み苦しみがなくなりますように
私の親しい生命の願いごとが叶えられますように
私の親しい生命に悟りの光が現れますように
私の親しい生命が幸せでありますように(3回)
生きとし生けるものが幸せでありますように
生きとし生けるものの悩み苦しみがなくなりますように
生きとし生けるものの願いごとが叶えられますように
生きとし生けるものに悟りの光が現れますように
生きとし生けるものが幸せでありますように(3回)
私の嫌いな生命が幸せでありますように
私の嫌いな生命の悩み苦しみがなくなりますように
私の嫌いな生命の願い事が叶えられますように
私の嫌いな生命に悟りの光が現れますように
私を嫌っている生命が幸せでありますように
私を嫌っている生命の悩み苦しみがなくなりますように
私を嫌っている生命の願い事が叶えられますように
私を嫌っている生命に悟りの光が現れますように
生きとし生けるものが幸せでありますように(3回)
2つ目の方法は、コンフォートカードと呼ばれるものです。
用意するものは以下の3つです。
・暗い色の紙
・明るい色の紙
・ペン
コンフォートカードの実践方法は次のとおりです。
明るい色のコンフォートカードによって自分を責めそうな時に前向きになる癖を付けることができ、徐々にセルフコンパッションを高めることが可能です。
目安としては2~3週間程度で徐々に気持ちがポジティブになっていくことを実感できるでしょう。
セルフコンパッションフレーズとは、セルフコンパッションを構成する「セルフカインドネス」「マインドフルネス」「コモンヒューマニティ」の3要素に対して、それぞれいたわりのフレーズを用意しておき、困難な状況下で思い出すという方法です。
例えばセルフカインドネスの場合、自分を責めてしまいそうなときには、「私は自分を大切にできる」「自分を必要以上に責めなくても良い」といったイメージです。
マインドフルネスの場合には物事をフラットに受け入れられなくなりそうな時に、「私は今ネガティブな感情にとらわれてしまっている」「感情的になり物事を正しく認識できていない」など、状況をあるがままに受容するためのフレーズが効果的でしょう。
コモンヒューマニティに関しては、「辛いのは自分だけではない」「失敗は誰にでもあり得ることだ」など、自分だけが劣っている、自分だけが辛いと思い込んでしまうことを回避できるフレーズを用意します。
アプローチの方向性はコンフォートカードと同様といえる方法ですので、フレーズをカードやスマホのメモ帳などに書いておいていつでも見られるようにしておくのもおすすめです。
セルフコンパッションの概要と効用、高め方について解説しました。
自分自身を思いやるセルフコンパッションを高めることで、幸福感やレジリエンスを高め、ストレスを減少させることができます。
自分を責めてしまいがちな人は、ぜひこの記事で紹介した内容を参考に、セルフコンパッションを実践してみてください。